生活保護を受けていますが、相続放棄はできますか?

できます。

民法第915条は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定めていますが、相続を承認するか放棄するかは相続人の意思に委ねられるべきことであり、他人の意思の介入は許されないと考えられているからです。

債務超過の状態にある相続人が、積極財産のほうが多い相続財産について相続放棄した場合でも債権者がこれを詐害行為として取り消すこともできないというのが多数説です。

同様に、仮に生活保護受給中の者が生活保護を打ち切られるのを阻む目的で相続放棄を行ったとしても、生活保護法第4条「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」の補足性の原則に反するものではありません。

相続放棄をした者はその相続に関してはじめから相続人でなかったものとみなされることから、生活保護法第61条の報告義務(被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。)もなく、第63条の返還義務が生じる余地もありません。

よってその理由如何に係わらず、保護受給中の者が相続を放棄することは自由であり、福祉事務所に事前に相談する義務も報告する義務もないのです。

ネット上では、相続放棄を業務とする多くの弁護士や司法書士が「先ずは福祉事務所に相談を」と言っているようですが、生活保護法と民法についての理解不足と言わざるを得ません。