京都アニメーションに放火して社員ら36人を殺害した青葉真司被告の被告人質問が始まった。
そのことにより被告の生い立ちや事件に到る動機等が徐々に明らかになってきている。
両親の離婚、父親からの虐待、派遣の仕事を転々とし、無職になってからは生活保護を受けようと市役所へ行ったが、断られたという。
これは岡行政書士事務所に寄せられる相談者の典型的なパターンだ。
だからといってこのような凶悪犯罪に走る人間はめったにいないし、あれば大変なことだ。
しかし、市役所に相談に行ったときに行政が本来の対応をしていれば生活保護受給は可能であったし、受けていれば今回の事件は無く、36人の犠牲者はでなかったかも知れない。
報道によれば、無職になり、電気やガス、水道も止められ、公園の水で洗濯するような状態だったので、生活保護を受けようと市役所へ行ったが、「働いてください」と断られたという。
この市役所の対応は明らかに法律違反だ。所謂本来受けることのできる人に受けさせない「水際作戦」だ。そもそも「電気やガス、水道も止められ、公園の水で洗濯するような状態」ではいつ餓死しておかしくない緊急事態である。生活保護第七条では、「要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。」と明記されている。又若く働く能力があっても実際に仕事があり、収入を得て最低限の生活ができていなければ、自立できるまでの間は生活保護を適用するのが法の原則であり、申請を断ることは役所にはできない。
大阪北新地の放火殺人事件の場合も大阪市此花区役所に生活保護申請の相談をしていたが、「定期的な収入をうかがわせる記録も確認できていない」、つまり無収入であるにもかかわらず、大阪市此花区役所は申請を認めなかったらしい。警察関係者も「「生活苦や孤立感が事件の遠因になったのかを慎重に調べたい」と述べていたから、此花区の法に違反した対応が事件を引き起こした一つの要因であることには間違いがない。
最近の二の凶悪放火事件がそれぞれ生活保護申請を役所が法に反して断ったことが原因の一つで有ることは偶然だろうか?
最後のサーフティーネットの綻びはこのような取り返しのない事件を引き起こす可能性があるということを行政はもっと自覚すべきでは無いだろうか?