岡行政書士事務所への相談では、過去に犯罪歴のある人からの相談も多い。
しかし先日相談のあった30歳台の青年の場合は少し特殊だった。
幼い頃に両親が離婚し、育ててくれた母親も早くに亡くなってしまった。
仕方無く父親の元に身を寄せたが、そこも直ぐに出て行くことになり、次に叔父のところに行ったがそこも追い出され、その後は仕方無く窃盗少年グループがアジトにしていた住居で暮らしていたらしい。
頼る大人もおらずお金もないので、食べる手段が「窃盗」だった。
成人しても働くことのできるところといえば、手配師の下で建築関係の日雇い仕事だった。
たこ部屋のような飯場を転々とし、いらなくなれば使い捨て。お金が無くなれば窃盗に走り、前科を重ねる。刑務所から出てくれば、又手配師の下での日雇い仕事。無くなれば又窃盗し、刑務所へ・・・。
岡行政書士事務所に相談してきたのは、もうそろそろこんな生活に終止符を打ちたかったからだそうだ。
いままでは「生活保護」という選択肢はなかったが、前科を重ねる生活に終わりを告げるための「英断」だったのだろう。
彼に限らず、相談してくる人は前科を隠す者はいない。みんな正直に言ってくれるので、こちらも安心して相談に乗ることができる。
しかし自立の上ではやはり「前科」は「壁」になる場合が多い。新聞にのるような重犯罪の場合は尚更だ。
少年法の「改正」のように、最近は犯罪者への「重罰化」こそが犯罪の抑止力になるかのような風潮だが、これは違うと思う。
経済的にも家庭的にも恵まれ、愛情深く育てられながら犯罪に走る者は少数だろう。やはり犯罪を生む温床は「貧困」と「孤独」だ。この対策を打たない限り犯罪は減らない。
そして犯罪を犯しても人生やり直すことのできる「寛容さ」が必要だ。
概して「刑務所帰り」の者たちはマナーがいい。電話でのやり取りだけだが、誠実さが伝わってくる。重犯罪の場合でも、それだからこそ、反省も深いのだろう。
何回でもやり直せる社会、いつでも、思ったときに再スタートを切ることのできる社会。それが結局再犯を防ぐことであり、犯罪への最大の「抑止力」なんだろうと思う。