先日は東海地方の40台男性からのSOSに対応し、大阪市内のアパートに入居してもらい、生活保護の申請を行った。
彼も最初の就職は正規雇用だったが、そこを退職すると所謂「工場派遣」で全国を転々としてきた。
連絡があったのは最後の派遣先を辞めて、中部地方のある県から住民票のある東海地域のある県までひたすら歩いていた途中だった。
仕事を辞めて仕事も家も無くなりお金は数百円。最近の寒波の中で「このままでは死んでしまう」と思い、とにかくも住民票のあるところまで戻ればそこの社会福祉協議会でお金を借り、そのお金でとにかく生活を立て直そうと思ったらしい。
しかし直ぐに借りられる公的資金は無く、第一その日は土曜日で市役所関係の機関は全て閉まっている。しかし彼は役所は土日、祭日は「休業」ということを忘れていたらしい。
辞めた会社(派遣先)も首になった訳では無い。
以前勤めていたところで、その会社は寮費は無料で時間給もいいと教えられてやってきたのだが、月1日でも欠勤となると「寮費無料」の「特典」はなくなり有料となる。派遣先の社員からの当りもキツく、一日でも休むと「給与泥棒」と罵られたらしい。なにより体調が悪く休みがちだったので会社に迷惑をかけると考え自主的に辞めたらしい。
その前は別の県で派遣の仕事に就いていた。
給与は20万円程度で、そこから家賃、食費、社会保険料、備品貸出費等と10万円近くが差し引かれる。それだけなら何とか生活していけるが、彼の場合はそこから更に過去の税金、国保料等がのし掛かってくる。
給与の差押えで多い時では10万近くが給与からの天引きなど税、国保料の支払いに消え、手元には殆ど残らず、会社から前借りに自転車操業だったらしい。
国保料の取立は「サラ金」以上だ。
先ず滞納すると、保険証の更新の際に、有効期間の短い保険証(短期被保険者証)が渡される。期間が短いので頻繁に役所に行って保険証を更新しなければならない。その時に過酷な取り立てが行われるのだ。
1年以上滞納すると、今度は保険証が取り上げられ、「被保険者資格証明書」が交付されることになるが、診療費はいったん全額自己負担となり、あとで保険給付分の支払を申請することになる。保険料も払えない人が全額自己負担で医療費を払える訳がなく、この時点で医者にも行けなくなる。
さらに納期限から1年6か月以上滞納すると、保険給付自体が差し止める。仮に最初全額医療費を支払ったとしても、その後も保険負担分は返ってこない。
さらになお保険料を納付しない場合は、差し止めた保険給付から滞納している保険料を差し引かれることになる。
さらに保険料の滞納を続けていると、滞納処分として、給与までを差し押えられてしまう。(限度額は給与額の20%限度だが)。
まさに国民の命と健康を人質にした借金取りではないか。
この重荷が彼の人生を変えてしまった。
これから逃れる上でも生活保護の受給は有効だ。保護費はたとえ税や国保の滞納であっても差し押さえられることは無く全額が支払われる。保険料も支払う必要も無く、医療費も無料だ。普通の借金なら自己破産すれば債務は免除されるが税と国保料の滞納は無くならない。しかし生活保護受給中だけはその悪夢から逃れられるのだ。
生活に困窮しても高い国保料の重みは容赦なく襲ってくる。そんなときはためらわずに生活保護を申請しよう。受給後は国保から離脱して医療扶助となるので、滞納が増えることもない。この後の人生を再建するのに一番の方法だ。